本日の信濃毎日新聞「教えて!お茶博士」(大森正司博士)に、本物の発酵茶「後発酵茶」の記事が載っていました。
よく、「緑茶と紅茶、ウーロン茶の違いは、茶葉を摘みとった後発酵を止めるかどうかで別れます。」なんて説明していましたが、正しくいうと微生物が作用していない紅茶、ウーロ茶は発酵茶ではない、慣習的に発酵茶とされていたということだそうです。
今後説明するときに、このことを知ったうえで、説明していきたいと思います。
信濃毎日新聞2021年9月18日 「教えて!お茶博士」 記事内容
教えて!お茶博士 味わって健康に
希少価値高く入手困難 本物の発酵茶「後発酵茶」
「後発酵茶」、聞き慣れない貢葉だと思います。後発酵茶は摘んだ茶葉を加熱した後、カビなどの微生物を生やして発酵させることからその名が付けられました。
この「発酵」という言葉。科学的に言うと、食品に微生物が作用した結果、人の側からみて利用することができれば「発酵」、利用できなければ「腐敗」と表現します。
そのため、製造過程で微生物が関与しない紅茶(発酵茶)やウーロン茶(半発酵茶)は厳密に言うと発酵ではありません。「酸化」や「付加」反応と呼ぶのが正しいでしょう。とはいえ、長らく用いられているので慣習的に「発酵」と表現されることが多いです。
後発酵茶だけは製造過程で微生物が付着するため科学的に正しい「発酵茶」といえます。
国内の後発酵茶は、ハタハタ茶(富山)、阿波番茶(徳島)、石鎚黒茶(愛媛)、碁石茶(高知)の4種類しかありません。
海外では、プアール茶(中国)、竹筒酸茶(同)、ミアン(タイ、ラオス)、ラベソー(ミヤンマ古などが知られています。
ハタハタ茶(富山黒茶)は空気に触れさせてカビを付ける「好気発酵」が特徴です。収穫した茶葉を蒸した後、おけに入れてI~2週間、発酵させます。時々茶葉を上下にかき混ぜて天日干ししたら完成です。
阿波番茶は「嫌気発酵」と呼ばれる、空気に触れさせない、微生物による乳酸菌発酵が特徴です。その製法は、収穫した茶葉をゆでてもみ、おけに入れて重しを載せたら2~4週間漬け、天日干しにします。
石鎚黒茶と碁石茶は、好気発酵と嫌気発酵の両方の製法を組み合わせた作り方です。石鎚黒茶は白カビ、碁石茶は青カビと黒カビが付着してできます。
後発酵茶は、独特の酸味が特徴で、湯1㍑に茶葉3グラムを入れて煮出す飲み方がお薦めです。
近年、国内の後発酵茶は製造に手間がかかるため生産農家が減少しています。販路が少ない上に、発酵によってもたらされる中性脂肪を減らすなどの健康効果が注目された結果、ますます入手困難となっています。
(大妻女子大名誉教授) 大森正司